人事部の仕事にたずさわるようになって、ふと以前務めていた会社で採用面接をしていたときのことを思い出した。
お手伝いするようなかたちで、不動産企業の総務・経理・人事に関わっていたのだが、お察しの通りこの業界は離職率が高く、人の入れ替えサイクルはかなり早い。結果的に、採用面接をする機会は非常に多くなる。立て込んでいたときには、2ヶ月間、毎日のように面接していたように思う。
それだけ毎日面接していると、聞く内容も流れもだいたい決まってくるのだが、面接では聞いてはいけない項目がある。ちょっと検索すれば、そんな類の記事がいくらでも見つかる。例えばこんな記事とか。
面接官デビューする前に!採用面接で質問してはいけない禁止事項4つ
ここで取り上げられているのは、以下の4項目。
・家族のことなど個人でどうにもできないこと ・結婚や出産の予定 ・「この質問、必要?」と思ってしまう質問 彼氏彼女はいるか、親の職業は何か、あだ名は何かなど ・実は禁止されている質問 愛読書は何か、将来何をしたいのか(これはちょっと意外かもしれない)
必ずしもこういった項目が全部ダメだとは思わない。話の流れで自然に聞けることもあるし。ただ思わず笑ってしまったのは、このすべてを質問するのが、その会社での人事採用面接ルールだったこと。典型的なブラック企業だったんだなぁと、6年経った今になってわかった。
家庭環境や親の職業、これから結婚する予定があるか、血液型に彼氏彼女の有る無し、果てはクレジットカードを持っているかまで聞き出すことが義務づけられていたのだから驚くばかり。
当初は「まぁ、ルールだから…」と我慢して遠回しに聞き出していたものの、そんなことを不躾に聞いてくる会社に勤めようなんて普通は思わない。当然採用できるわけもなかったので、次第にこのルールを無視して面接するようになった。
上司にはさんざん文句を言われたが、どう考えても納得のいかないことだったのでこちら側は徹底的に無視。といっても、自分が一次面接担当で、二次以降はその上司が面接していたから、結局「してはいけない質問」をしていたのだろうけれど。
クレジットカードをつくれるか聞いてくるような会社に入ってはいけない
結果的に、敏感にそういったことを察知できる優秀な人ほど内定には応じず、「もうどこでもいいから早く勤めたい」という投げやりな人だけが入社してくることになる。後者の人はたいてい長続きしないから、結局また採用活動をしなければならない。求人広告を出すにもお金はかかるし、何より採用面接に費やす時間がもったいない。
この悪循環は当時の上司にもさんざん説明したが、「そんな家庭環境や親の職業、(女性に対し)これから結婚するかどうか、クレジットカードがつくれるかどうかも分からない人を採用して、突然辞めでもしたら責任取れるのか?」と逆に責めてくる始末。
提案するたび「お前に責任が取れるのか?」と凄んでくる上司がいる会社は、ブラック企業と断定していいと思う。そんな上司には「いや、責任取るのはお前だから。お前は責任を取るために存在してるんだよ」って言ってやりたい。会社側はもちろん面接をしているが、面接にくる人も会社を見定めていると分かっていないのだろうか。
いくら早く就職したいと思っていたとしても、こんな質問をしてくる会社に入るのはぜったいに辞めた方がいい。